2023年12月26日、ウクライナ侵攻は1年以上経過した現在も終結のめどは立っていません。戦況は膠着状態が続く中、経済制裁や難民や国際秩序への影響が続いています。
戦況

2023年に入ってからはウクライナ軍が反撃に転じ、ロシア軍の進撃を阻む場面も見られるようになりました。しかしロシア軍は東部や南部を中心に依然として優勢を保っています。
東部戦線
ウクライナ軍は東部ドンバス地方でロシア軍と激しい戦闘を繰り広げています。ロシア軍はルハンスク州の要衝のセベロドネツクとリシチャンシクを完全に占領したことを宣言していますが、ウクライナ軍は両都市の郊外で激しい抵抗を続けています。
セベロドネツクとリシチャンシクはドンバス地方のルハンスク州の西部に位置します。ロシア軍は両都市を占領することで、ドンバス地方の制圧をほぼ完了させようとしています。
南部戦線
南部ではヘルソン州とザポリージャ州で、ロシア軍が徐々に進軍を続けています。しかしウクライナ軍も反転攻勢を開始し、一部の地域でロシア軍を後退させています。
ヘルソン州の州都ヘルソンはロシア軍が最初に占領した都市ですが、その後、ウクライナ軍が奪還に成功して2023年11月に1年が経過しました。
ウクライナ軍はロシア軍の補給路を断ち切ることで、ヘルソン州とザポリージャ州の奪還を目指しています。
ロシア軍が優勢とはいえ、ウクライナ軍も東部と南部の戦線で抵抗を続けています。西側諸国から供与された重火器や装備を活用し、ロシア軍に大きな損害を与えています。戦争は依然として膠着状態が続いているといえます。
影響
ロシアのウクライナ侵攻は経済制裁や難民の発生など、さまざまな影響を与えています。
経済制裁
2023年のロシアへの主な経済制裁は以下のとおりです。
金融制裁
ロシアの主要金融機関をSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除し、ロシアの中央銀行への資産凍結、ロシア国債の取引禁止などが行われています。
SWIFTから排除されたことで、ロシアの金融機関は国際的な金融取引を行うことができなくなり、資金調達が困難になっています。また、中央銀行の資産凍結により、ロシア政府は自国通貨ルーブルの下落を抑えるための外貨準備を活用できなくなっています。
貿易制裁
ロシアへの先端技術や軍事関連の輸出禁止やロシアからの輸入品の一部禁止などが行われています。
先端技術や軍事関連の輸出禁止により、ロシアの製造業や軍事産業は生産活動や開発活動に大きな支障をきたしています。また、輸入品の一部禁止により、ロシアの消費者物価は上昇しています。
個人制裁
ロシア政府や軍事関係者や富裕層などに対する資産凍結や渡航禁止などが行われています。
ロシア政府や軍事関係者や富裕層に対する資産凍結や渡航禁止により、彼らの行動や発言が制限されています。
2023年時点で、ロシアはウクライナ侵攻を継続しています。そのため、経済制裁は今後も継続される可能性があります。
難民
ロシアのウクライナへの侵攻はウクライナで最も大きな難民危機を引き起こしています。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると2023年12月現在、ウクライナから避難した難民は1400万人を超えています。そのうち、約600万人がウクライナ国内で避難生活を送っており、約800万人が国外に避難しています。
ウクライナ難民の多くは女性と子どもです。ロシア軍による攻撃により、多くの男性が戦闘に参加しているためです。
ウクライナ難民は近隣諸国に避難しています。その中でもポーランド、ルーマニア、ハンガリー、モルドバは最も多くのウクライナ難民を受け入れています。
これらの国々はウクライナ難民の受け入れに苦労しています。難民キャンプの設置や生活必需品の提供など、多くの課題を抱えています。
ウクライナ難民危機は世界的な課題となっています。国際社会はウクライナ難民の支援に取り組んでいます。
国際秩序
ロシアのウクライナ侵攻は国際秩序に大きな影響を与えています。その影響は大きく分けて以下の3つにまとめることができます。
民主主義と専制主義の対立
ロシアのウクライナ侵攻は民主主義と専制主義の対立という構図にも捉えられています。ロシアは民主主義を脅かす専制主義国家とみなされており、欧米諸国はロシアの侵略行為を非難して経済制裁を実施しています。
この対立は国際社会の分断を深め、国際秩序の再編成につながる可能性もあります。
欧州の安全保障の強化
ロシアのウクライナ侵攻は欧州の安全保障にも大きな衝撃を与えました。欧米諸国はロシアの脅威に対抗するために防衛力の強化を進めています。
特にNATO(北大西洋条約機構)は東欧諸国への軍事展開を拡大しています。これにより、欧州の安全保障は冷戦後以来の緊張状態にあります。
世界的なエネルギー安全保障の懸念
ロシアは世界有数の原油・天然ガス輸出国です。ウクライナ侵攻により欧米諸国はロシアからのエネルギー輸入を制限しています。
これにより、世界的なエネルギー価格が高騰し、インフレが加速するなどの影響が出ています。また、エネルギー安全保障の確保が各国の喫緊の課題となっています。
ロシアのウクライナ侵攻は今後も長く続くことが予想され、国際秩序の大きな転換点となる可能性があり、今後の世界情勢を大きく左右することになるでしょう。
日本の対応
日本はウクライナ侵攻を非難し、ロシアへの経済制裁を実施しています。また、ウクライナへの人道支援も行っています。
経済制裁
日本は2022年2月からロシアへの経済制裁を始めて現在も続けています。
経済制裁の内容として貿易面では半導体などの戦略物資のロシアへの輸出停止やロシア産資源の輸入停止、金融面ではロシアの個人と企業と銀行の資産凍結や一部銀行の国際決済網からの排除などが挙げられます。
人道支援
日本は2022年3月からウクライナへの人道支援を始めて現在も続けています。
人道支援の内容としてウクライナと周辺国への食料や医療品などの生活援助、2022年4月からのウクライナ難民の受け入れが挙げられます。
展望
ロシアのウクライナ侵攻の今後の展望は不透明です。ロシアは東部や南部で優勢を保っていますが、ウクライナ軍の抵抗も根強く、戦争の長期化が懸念されています。
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