日本の長時間労働について

概要

日本の長時間労働 by 結城永人

日本の長時間労働は労働者の健康と安）経済成長の阻害要因として長年問題視されてきました。2021年度の日本人労働者の年間労働時間は1607時間でした。これは、OECD加盟38か国中28位の長さです。これは2016年度の1713時間からおよそ、100時間、減っており、近年、徐々に労働時間が削減される傾向にあることが示されています。出典：日本の労働時間が世界と比べて長い理由とは？リスクや対策方法を解説長時間労働の原因日本の長時間労働の原因は大きく分けて以下の3つが挙げられます。労働者の意識労働者の意識として働き過ぎを美徳とする風潮や仕事への責任感が挙げられます。働き過ぎを美徳とする風潮があると長時間労働を当たり前のことと捉えてしまい、働き過ぎてしまう傾向があります。また、仕事への責任感が高い場合、仕事に打ち込みすぎて長時間労働につながる可能性があります。企業の働き方企業の働き方として業務過多や人員不足が挙げられます。業務過多の場合、勤務時間内に仕事を終わらせることができず、残業や休日出勤につながります。人員不足の場合も一人あたりの業務量が増え、長時間労働につながります。社会の価値観社会の価値観として長時間労働を評価する風潮が挙げられます。長時間労働を評価する風潮があると長時間労働をしないと評価されないというプレッシャーを感じ、長時間労働につながる可能性があります。また、これらの原因は相互に関連し合っており、単一の原因だけで長時間労働が引き起こされるわけではありません。例えば企業の働き方として業務過多の場合、労働者の意識として働き過ぎを美徳とする風潮があるとさらに長時間労働につながる可能性があります。このように日本の長時間労働は複雑な要因が絡み合って引き起こされている問題であると言えます。長時間労働の問題点日本の長時間労働は労働者や企業や社会全体にさまざまな問題を引き起こしています。労働者への問題点長時間労働は労働者の健康や生活の質に大きな影響を与えます。具体的には以下のようなものが挙げられます。健康被害長時間労働は過労死、過労自殺、脳・心臓疾患、精神疾患などの健康被害を引き起こすリスクを高めます。生活の質の低下長時間労働は睡眠不足、運動不足、家族との時間の減少などにより、生活の質を低下させます。離職率の増加長時間労働は労働者のモチベーションや仕事への意欲を低下させ、離職率の増加につながります。企業への問題点長時間労働は企業にもさまざまな問題を引き起こします。具体的には以下のようなものが挙げられます。生産性の低下長時間労働は労働者の疲労や集中力の低下により、生産性の低下を招きます。コストの増加長時間労働に伴う残業代やメンタルヘルス対策などのコストが増加します。企業イメージの低下長時間労働は企業イメージの低下を招き、採用や顧客獲得の際にマイナスの影響を与えます。社会への問題点長時間労働は社会全体にもさまざまな問題を引き起こします。具体的には以下のようなものが挙げられます。少子化の進行長時間労働は労働者の結婚や出産を阻害し、少子化の進行につながります。経済の低迷長時間労働は労働者の生産性の低下や企業のコスト増加により、経済の低迷につながります。長時間労働の改善案日本の長時間労働を解消するためには、企業や労働者、政府のそれぞれの取り組みが必要です。労働者への改善案労働者は自分の健康や生活の質を守るために残業時間の削減を積極的に働きかけることが大切です。また、仕事とプライベートのバランスを重視し、ワークライフバランスを実現することを目指しましょう。企業への改善案企業は残業は当たり前という風潮を改め、残業時間の削減に積極的に取り組む必要があります。また、仕事の量や質の適切な管理を行い、残業に頼らない働き方を実現する必要があります。社会への改善案政府は働き方改革の推進に向けて残業時間の上限規制などの制度を整備し、企業や労働者に対する働き方改革に関する啓発・教育を強化する必要があります。長時間労働の対策日本政府は長時間労働の削減に向けた取り組みを進めています。具体的には以下のようなものが挙げられます。残業時間の上限規制2019年4月から労働基準法が改正されました。

残業時間の上限が原則月45時間・年360時間。

※企業規模によって施行時期が遅れる場合がありますが、2020年4月までに全企業が労働基準法の改正の対象となります。これにより、長時間労働の抑制が期待されています。働き方改革関連法の施行2019年4月から働き方改革関連法が施行されました。

時間外労働の上限規制の導入。

年次有給休暇の確実な取得。

中小企業の月60時間越えの残業について割増賃金率引上げ。

「フレックスタイム制」の拡充。

「高度プロフェッショナル制度」を創設。

産業医・産業保健機能の強化。

勤務間インターバル制度の導入促進。

正規雇用と非正規雇用労働者間の不合理な待遇格差の禁止。

※企業規模や業種によって施行時期が遅れる場合がありますが、2024年4月までに全企業が働き方改革関連法の対象となります。この法律では働き方の多様化や柔軟化の推進、長時間労働の是正など、さまざまな取り組みが盛り込まれています。企業への働き方改革の指導厚生労働省は企業に対して働き方改革の取り組みを指導しています。具体的には残業時間の削減やテレワークの導入など、長時間労働の削減につながる取り組みを促しています。しかし長時間労働の削減は労働者の意識改革や企業文化の変化など、さまざまな課題を伴います。日本政府は今後も継続的な取り組みを通じて長時間労働の解消を目指していく必要があります。